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造形構想学部・造形構想研究科の「いま」を伝える

「創造的思考力」を培う教育とは? 教授陣が語る学びの特色  第4回

市ヶ谷キャンパスは多様な人材が連携し
「新しい価値づくり」の拠点となる

井口博美教授 (2019年4月着任予定)

造形構想学部クリエイティブイノベーション学科の学生は3年次になると、鷹の台キャンパスから都心の市ヶ谷キャンパスへ移り、学生生活を送ることになる。ムサビ初の都心型キャンパスはどのような学びの場となるのか。今回は井口博美教授から、新キャンパスの特色や将来的な構想を語ってもらった。


井口博美教授

キャンパスというスペースを社会的イノベーション創発のための“プレイス”に変える

近年、関東圏の大学では都心にキャンパスを開設・移転する動きが広がっていますが、現在、開設準備を進めている市ヶ谷キャンパスは、「ムサビが新しいキャンパスを都心につくる」という話では終わりません。私たちは、研究に打ち込みその成果を発表するキャンパスというスペースを、大学や企業、地域住民のコミュニティにもなるような“プレイス”に変えていきたいと考えています。

施設の概要をお話しすると、新キャンパスとなるビルには教室フロアのほかに、学生、教員、企業、自治体、そして一般の方々とのつながりを生み出すことを目指し、「くらし」「まなび」「ものつくり」「共創」などのコンセプトに沿ったオープンスペースを構想中です。

本学のwebサイトですでに発表している通り、このオープンスペースの一角に、株式会社良品計画と本学の共創実験店舗となる「MUJI com 武蔵野美術大学」の出店も決まりました(http://www.musabi.ac.jp/news/20181128_03_02/)。無印良品の食品や日用品の販売をはじめ、本のある暮らしを提案する「MUJI BOOKS」や、ワークショップ、マルシェなどを定期的に開催できるオープンスペースを用意し、キャッシュレスAppやセルフレジの導入も検討しています。

“共創実験店舗”と銘打っているように、この店舗は単なるテナントではなく、授業やゼミから生まれた事業プロジェクトのリサーチ、プロトタイプ、評価・検証、社会実装を循環できる実験の場でもあります。大学や企業単体ではさまざまな制約から取り組むことが難しかったテーマについても、積極的に挑戦していきたいと考えています。

井口博美教授

研究に欠かすことのできない設備については、「ビジョンスタジオ」「プロトタイプスタジオ」「MUJIスタジオ」という3つのスタジオの準備を進めているところです。3Dプリンタやレーザーカッターといった工作機械や、原寸大でリアルなシミュレーションができる大画面マルチスクリーン環境などを導入し、スタジオ内にはデジタルファブリケーションに精通した専門スタッフが常駐する予定です。ファブラボ的な環境を整備している大学は珍しくありませんが、研究で得られた新たな知見や技術を、実際のサービスに反映したり製品化したりできる“連動性”をひとつのキャンパス内で実現する画期的な事例になると期待しています。

社会にビジョンとプロトタイプを提案する「ソーシャルクリエイティブ研究所」構想

まだ構想段階ではあるものの、将来的には市ヶ谷キャンパスに“研究所”の機能も加えていきたいと考えています。学生や教員だけでなく、外部の人材を客員研究員として招き、大学院や学部の研究と連携した研究所企画のプロジェクトを推進する。

たとえば、国内の社会的課題の解決(日本のデザイン)、小中高や企業と連携したデザイン教育(みんなのデザイン教育)、人生100年時代に向けた新しい暮らし方・働き方の提案(未来の暮らし方・働き方デザイン)などを基本テーマに、社会に向けてビジョンとプロトタイプを研究提案するのです。企業・行政と連携した共同研究を推進することもあれば、プロジェクトごとに参加団体を募り、短期的なスパンで課題解決に取り組んだり、映像学科や造形学部の他学科と連携し、web、書籍、映像などのメディア活動を展開することもあるでしょう。

井口博美教授

新学科関連のガイダンスなどでこれまでもお話ししてきましたが、今、デザインやアートに対する期待は社会的に高まっていて、特に美大の教育で培われる人間力は、これからの時代を生き抜くうえで非常に重要なものになってくるはずです。

美大生は絵ばかり描いている、美大の教育は狭義のアーティストやデザイナーの養成に主眼を置いているという一般的なイメージは、美大の伝統がつくり上げてきてしまった面もありますが、本学の造形教育が育んできた「創造的思考力」を養う教育のエッセンスを集約し、美大教育の本質をプレゼンテーションしていくことが、社会から期待される美大の新しい役割です。そういう意味で、今回、教育分野のスペシャリストである高濱正伸氏を新学科の客員教授として招くことができたのも、美大から日本の教育改革のあり方に一石を投じる重要なモデルになりうると考えています。

「エデュケーションの時代は終わった」と言われるように、新学科も学生と教員が「教えられる側」「教える側」で対峙するのではなく、お互いが刺激し学び合う“ラーニング”の共創の場にしていく。そこでは、従来の大学にみられる整然とした個人研究室すら置かれないかもしれません。学生、教員、そして企業や一般の方々が出会い、対話・交流し、新たな価値を創造するための場づくりを実践していくことが、新キャンパスの目的です。


井口博美教授のプロフィールは以下のページをご覧ください。
「カリキュラム」 教員紹介

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