本島侑(武蔵野美術大学大学院 造形構想研究科 造形構想専攻 クリエイティブリーダーシップコース)

現在、ブランディング系のコンサルティングファームでコンサルタントを担当しながら、クリエイティブリーダーシップコース(以下、CLコース)に在学しています。

社会人で大学院進学を決めた理由は二つあります。まず一つに、クリエイティブな領域に関心を持っていたからで、二つ目は、組織の課題感を解消するアプローチとして、デザインやクリエイティブが非常に有用であることに気付いていたからです。そういったビジネス領域におけるデザインアプローチを研究・実践している人は誰だろう、と調べていくうちに岩嵜博論先生とCLコースへ辿り着いたんですよね。

デザイン領域は、座学だけでなく、実践を通して学びを深めることにも魅力を感じ、進学を決意しました。とはいえ実際に授業課題に取り組むと、予想してなかったストレスや不安もありました。言葉を使って意見を述べることは怖くないのですが、絵やモノなど見える形で表現した経験は少なかったので、初めは結構緊張した記憶があります。何回か繰り返すうちに、自らで制作・公開することに慣れていきました。

好きだった授業は「造形言語リテラシー実習」です。毎回テーマを午前中に提示されて、夕方までに制作し講評してもらうという授業内容でした。自分の内面や思考を人に伝えるために、短時間でどうビジュアル化していくかを考えるのが楽しかったですね。あとは、制作側の意図と鑑賞側が作品に共鳴するポイントは、必ずしも同じじゃないと知りました。また、多くの授業を通して、モノを制作し考えることのパワーを実感しました。これはビジネスで戦略や戦術を考える際にも活用できると考えています。従来の企業戦略は言葉で作っていくので、共通言語を揃えないと解釈がずれてきます。でもビジュアライズされていると同じモノを見ながら話せるだけでなく、異なる意見も多く生まれるのではないかと思っています。

身体と服の境界。シャツのボタンを留める数から社会的装いとプライベートの装いという主観的な曖昧さの境界を探った

多くの授業や学生同士の関わりを通して、大学院入学時に設定した研究テーマは変化していきました。当初は、社員が自律的な行動を起こすための仕組みが研究テーマでしたが、現在は組織において集団が創造性を強化するために、どんな仕掛けができるかを考えています。

現代は企業経営においても「創造性」とよく言いますが、創造的な人を呼び込むのではなくて、すでに会社の中にいる人を創造的にするためにはどうしたらいいか。それを場所や環境で解決するのではなく、人の心理的な変容をもって行動を変えるにはどうしたらいいだろう、と最近は考えるようになりました。それも固い仕組みじゃなくて、もうちょっと人間味のある方へ寄せたいんです。企業側が一方的に働きかけるのでははく、総合的に化学反応が起こるような領域に興味が出てきました。

大学院進学を考えている人へ一言

自分の興味を仕事に活かしたい人や、世の中で定義・整理されていない問題を様々なアプローチを通して解決していきたい人にはオススメなのかなと思っています。ただ、ワークライフバランスの調整は必要なので、今まで休憩や趣味に使っていた時間が大学生活に充てられることは覚悟しておいたほうがいいですね。あとは、社会科学や哲学など参照する分野が多いので、デザイン以外の領域にも興味があるとなおいいと思います。